2023年度税制改正:生前贈与の相続税課税対象期間が変更
2023/10/11
2023/10/11
2023年度の税制改正で生前贈与の相続税課税対象期間が変更。これまでの3年から7年に延長される中、具体的な影響や節税策について詳しく解説。新しい制度を理解し、賢い相続・贈与の準備を。
亡くなる前3年以内の生前贈与は無効?
「亡くなる前3年間の生前贈与は無効になる」という話を聞いたことがあるかもしれません。正確には生前贈与自体は有効ですので、もらった財産を返却する必要はありません。ただし、相続税の申告をする上で、亡くなる前3年間の生前贈与を他の相続財産に足し合わせて相続税の計算をする必要があります。
これを税務用語で「生前贈与加算」といいます。
国税庁ホームページ 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
2023年度税制改正で生前贈与加算の対象は亡くなる前7年以内の贈与に
生前贈与加算の対象となる生前贈与が2023年の税制改正で、亡くなる前7年以内の生前贈与に延長されました。これにより、生前贈与で相続税の節税をする方法は少し効果が弱くなります。
国税庁ホームページ 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
なお、改正後の生前贈与加算の金額は、以下(1)と(2)の合計額になります。
(1)亡くなる前3年以内の生前贈与の合計額
(2)4年以上7年以内の生前贈与の合計額から100万円を差し引いた金額
※100万円引いてくれるのはありがたいのですが、ちょっと分かりづらいですね。
具体例 どれくらい相続税が増えるか?
以下の前提条件で具体的な影響額を試算します。
<前提条件>
・生前贈与加算を除いた課税遺産総額※は1億円
・相続人は子ども1人
・過去10年以上にわたり相続人に年間100万円の生前贈与をしている
※課税遺産総額とは、相続税の課税対象となる財産の総額を差します。課税遺産総額は、預金や不動産等のプラスの財産から債務や葬式費用などのマイナスの財産を控除した「正味の遺産額」から「基礎控除額」を差し引いて計算します。
上記の前提条件の場合、税制改正により相続税は120万円増加することとなります。なお、遺産規模や対象となる相続人の数等で影響額は変わりますので正確には個別にシミュレーションすることをお勧めします。
実際に税制改正の影響がでるのはいつから?
生前贈与加算の期間延長の対象となるのは、2024年1月1日以降の生前贈与です。2023年までの生前贈与は、4年以上7年以内の部分の加算対象とされません。
したがって、この税制改正が実際に影響がでるのは、2027年1月1日以降に亡くなった人の相続からです。
※2027年に亡くなった場合の加算対象となる生前贈与は以下の通りです。
(1)2027年の生前贈与
(2)2026年の生前贈与
(3)2025年の生前贈与
(4)2024年の生前贈与 ←税制改正で延長
(✕)2023年の生前贈与 ←7年以内だが2023年までの贈与なので対象外
相続税の増加を回避する方法はあるの?
相続時精算課税制度の利用
同じく2023年度税制改正で相続時精算課税制度が使いやすくなりました。これまでは活用場面が少なかったですが今後は利用が増えるでしょう。
他の贈与税の非課税制度
住宅取得資金の贈与、教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の非課税贈与などの非課税贈与制度も検討しましょう。
孫への贈与
孫への贈与は生前贈与加算の対象外です。今後は孫への贈与が増えると予測されています。
早めの生前贈与
加算対象年が4年延長されるということは、4年早く生前贈与を開始すれば影響がないということです。シンプルですが、早めに動き始めることが着実に成果を得られる対策です。