相続税の過少申告とペナルティ: 税務調査で知っておくべき重加算税と避ける方法
2023/10/21
2023/10/22
相続税の税務調査におけるペナルティには、過少申告加算税や延滞税があり、状況に応じて異なる税率が適用されます。しかし、特定の状況下ではこれらの税金が免除されることもあります。一方、故意に誤った申告をした場合、重加算税という重いペナルティ課されることがあります。
税務調査のペナルティ
税務調査で申告もれが発見された場合、通常は本来支払うべき税金に加えて、過少申告加算税と延滞税が課されます。
過少申告加算税
新たに納めることになった税金の10%相当額です。
ただし、新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%になります。
なお、税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。
国税庁リンク https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm
延滞税
延滞税等は法定申告期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される金利のような税金です。
延滞税の割合は年によって異なります。
令和5年では、最初の2か月は年「2.4%」、2か月経過後は年「8.7%」となっています。
なお、延滞税の計算期間には特例があり、期限内申告書が提出されていて、法定申告期限後1年を経過してから修正申告があった場合は「1年分のみ」が延滞税の計算期間となり、それ以降の期間分の延滞税はかかりません。
国税庁リンク https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
延滞税と過少申告加算税が免除される場合
例外的に、相続税の期限内申告を行った人が、以下の事情により修正申告をした場合は、過少申告加算税と延滞税は課されないこととなっています。
・期限内申告書の提出期限後に、自分以外の者について、生前贈与分の相続税申告が漏れていたことが分かった場合
・相続財産として扱われる死亡退職手当等の支給が法定申告期限後に確定し、支給を受けた場合
・未分割財産について相続分と異なった分割があった場合
重加算税(仮装又は隠ぺい)が課される場合
重加算税とは
単純なミスではなく、事実を隠ぺい又は仮装して相続税額を減らして過少申告をしていたと認定された場合は、通常の過少申告加算税よりも高い割合の重加算税が課されます。
具体的には、以下のような事実がある場合に重加算税が課されます。
(1) 相続人(受遺者を含む。)又は相続人から遺産(債務及び葬式費用を含む。)の調査、申告等を任せられた者(以下「相続人等」という。)が、帳簿、決算書類、契約書、請求書、領収書その他財産に関する書類(以下「帳簿書類」という。)について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿をしていること。
(2) 相続人等が、課税財産を隠匿し、架空の債務をつくり、又は事実をねつ造して課税財産の価額を圧縮していること。
(3) 相続人等が、取引先その他の関係者と通謀してそれらの者の帳簿書類について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿を行わせていること。
(4) 相続人等が、自ら虚偽の答弁を行い又は取引先その他の関係者をして虚偽の答弁を行わせていること及びその他の事実関係を総合的に判断して、相続人等が課税財産の存在を知りながらそれを申告していないことなどが合理的に推認し得ること。
(5) 相続人等が、その取得した課税財産について、例えば、被相続人の名義以外の名義、架空名義、無記名等であったこと若しくは遠隔地にあったこと又は架空の債務がつくられてあったこと等を認識し、その状態を利用して、これを課税財産として申告していないこと又は債務として申告していること。
相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/sozoku/170111_2/01.htm
重加算税の税率
過少申告の場合の重加算税の税率は新たに納めることになった税金の35%相当額です。なお、この場合は通常の過少申告加算税は課されません。
また、無申告の重加算税の税率は40%となります。
重加算税の場合の延滞税
さらに、重加算税に加えて、延滞税も課されます。延滞税等は法定申告期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される金利のような税金です。
この延滞税についても通常の過少申告よりも厳しい取り扱いとなっています。通常の過少申告加算税の場合は、除算期間という制度が設けられていて、本来の法定申告期限から1年以上経過した後に追徴課税を納税したとしても1年分の延滞税だけが課されることになっていますが、重加算税が課された場合はこの除算期間が適用されませんので、実際に追徴税額の納付が完了するまでの日数相当の延滞税が課されることとなります。
仮装又は隠ぺいされていた財産については配偶者も相続税が課税される
通常であれば、亡くなった方の配偶者が取得した正味の遺産額のうち、次のいずれか多い金額までは相続税はかかりません。これを配偶者の税額の軽減と呼びます。(相続税の配偶者控除とも呼ばれます。)
・1億6千万円
・配偶者の法定相続分相当額
ただし、仮装又は隠ぺいされていた財産についてはこの制度の対象外となるため配偶者であっても相続税が課されます。